
どんな投資手法を選ぶにしても、ファンダメンタル分析を学ばなければ、自分の買った銘柄が優良株かどうか判断できません。悪材料や決算後の下落で株価が下がった理由が分からず、SNSで無駄に理由を探すことに時間と精神を浪費することになってしまいます。
今回は企業の決算書や財務諸表を読み、自分が投資した企業の財務状況を把握して、長期投資で成功するための方法を紹介します。
ファンダメンタル分析を行うことで、優良企業を見分け、EPS(EPSについては後述します)の上昇によって長期投資で利益を得ることができます。優良銘柄を見つけたら監視リストに入れておき、大きな下落が来た時に仕込むことも可能です。
最後まで読むと以下のことが分かります。
ファンダメンタル分析とは?
ファンダメンタル分析とは決算短信や有価証券報告書を読み企業の財務状態、業績、業界の状況などを基に、株式の本質的な価値を評価する手法です。この分析により、投資家は株式が適正価格か、過大評価または過小評価されているかを判断できます。
ファンダメンタル分析をする意味がないと言われる4つの理由
- チャートは投資家やトレーダーの気持ちを反映している
選んだ企業の株価は投資家の予想で変動するため、ファンダメンタル分析をしてもチャートの動きが読めないという意見があります。 - 決算が堅調でも不測の事態が発生することがある
例えば、製品に関する重大なミスや粉飾決算が発覚するなど、投資家には予測できないリスクがあります。 - 短期売買では意味がない
デイトレードやスイングトレードのような短期売買では、時間軸が異なるため、ファンダメンタル分析よりもテクニカル分析が重視されます。 - 政策や業界のトレンド転換が影響する
政策や業界のトレンド転換によって株価の値動きが変わるため、予測が難しいという意見があります。
これらの理由からファンダメンタル分析は意味がないと言われることがありますが、私はデイやスイングをする際でもファンダメンタル分析が有効だと考えています。前もって監視リストに入れておけば、好材料が出た際に反転上昇の反発を狙って利益を出せるからです。個別の企業だけでなく、各国の情勢分析にも役立つため、大局を見極める上でも重要です。
決算書を読んでみよう
決算書を読んで成長株、割安株、復活株を探そう!
まず、成長株、割安株、復活株の定義を簡単に説明します。
- 【成長株とは】
ROE、ROA、財務レバレッジ、EPS成長率の指標を使ったり売上高や経常利益が3年ほど遡って年々上がっている企業を探します。できれば5~10年伸び続けている企業もチェックしてください。 - 【割安株とは】
PER、PBR、配当利回りを見て企業にとって適正な株価を判断する指標となります。 - 【復活株とは】
赤字決算を出した企業が投資家から見放されて株価が急落した後、黒字決算となり上昇トレンドを形成する株を指します。
【自己資本利益率(ROE)とは】
- 「Return On Equity」の略で、投資家から出資してもらった資本を効率よく運用できているかを示す数値です。
- 一般的には8~10%を超えていると優良企業と言われています。
自己資本利益率(ROE)の計算式は以下となります。
自己資本利益率(ROE)(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
【総資産利益率(ROA)とは】
- 「Return on assets」の略で企業が株主や銀行から借りた資本に対してどれだけ儲けたかが分かる指標です。計算方法は2パターンあり当期純利益と経常利益を使う場合もあります。
- 分母を当期純利益にして分かることは税金や利息などを差し引いた純粋な利益となり株主に還ってくるため購入した株に対しての利益率となります。
- 分母を経常利益にして分かることは総資産に対して企業が本業で稼いだ利益率が分かるようになります。
- 私達が使う指標は株に対しての還元率になるため、主に当期純利益の方での計算とします。
適正値は一般的には5%以上あれば優良と言われています。
総資産利益率(ROA)の計算式は以下となります。
総資産利益率(ROA)(%) = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100
総資産利益率(ROA)(%) = 当期経常利益 ÷ 総資産 × 100
ROEとROAが出たら財務レバレッジ計算をしよう。
- 財務レバレッジとは企業の資本が総資産に対して何倍の水準にあるか分かるようになります。一般的には2~3倍以下が水準となります。この倍率が上がっていくと負債や利息の比率が高いと言えます。
財務レバレッジの計算式は以下となります。
財務レバレッジ(倍) = 総資本 ÷ 自己資本
【EPSとEPS成長率とは】
- EPSは「Earnings Per Share」の略で企業が1株あたりに稼いだ利益となります。
長期投資をする際にEPSが毎年増加しているかどうかで投資家の利益に係るので重要な指標となります。 - EPSが上昇する方法としては毎年の売上や利益の上昇、自社株式の取得と償却をすることで上がっていきます。
- 毎年EPSが上昇しているか?EPSの成長率を計算して判断するということです。
EPSとEPS成長率の計算式は以下となります。
一株当たりの純利益(EPS) = 当期純利益 ÷ 発行株式数
EPS成長率(%) = 当期年EPS ÷ 前期年EPS × 100
【PERとは】
- 「Price Earnings Ratio」の略で一般的な基準は15倍とされていますが、業種により基準が異なるので時価総額の上位5社を基準にしてみてください。別名では株価収益率とも言われていて、この指標を使うと現在の株価の人気が1株当たりの当期純利益(予想)=(予想EPS)の何倍なのかを知ることができます。
- 選んだ企業のEPSが毎年上昇しているとPERは下がります。EPSが上昇するということは企業の価値が上がるので株価も割安感から買われていきます。株価にも影響があるので、投資先の収益率にも係るので、とても大事な指標なのでチェックするようにしましょう。
PERの計算式は以下となります。
PER = 株価 ÷ 1株当たりの当期純利益(予想)(予想EPS)
【PBRとは】
- 「Price Book-value Ratio」の略で基準を1倍として株価が割安なのか割高なのかが分かるようになります。また、この倍率で分かることは企業が倒産する際に資産を全て売ると投資家に返ってくる株価の金額になります。
- PBR1倍未満の企業は倒産の可能性や政策次第で業績が落ちてPBRが下がっている可能性もあるので何故下がっているのか確認するようにしましょう。
PBRの計算式は以下となります。
PBR = 株価 ÷ 1株当たりの純資産
【配当利回りとは】
- 企業は株主への還元のために利益の一部を配当として還元するのですが、その配当の利回りを4%の基準にして投資する方法です。
- 権利落ち日後は株価が下落しやすいので、監視リストに入れておいて銘柄の株価が下がればそこを狙ってエントリーする方法もあります。
配当利回りの計算式は以下となります。
配当利回り(%) = 1株あたりの配当金 ÷ 株価 × 100
企業の財務状況を見抜いて倒産リスクを回避
貸借対照表(BS)を見る
貸借対照表はBS(Balance sheet / バランスシート)とも言われ企業の総資産、負債、純資産と分かれています。
・負債とは取引先への支払いや消費税又はこれから返済していくお金となります。
・純資産とは返済義務のない資産。
・負債と純資産の合計をすると総資産と同じ数字になります。
分かりやすく図で解説すると以下のような感じです。



(出所:イオン株式会社「決算資料」2024年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2,812KB))
https://www.aeon.info/ir/library/report/

累積損失が総資産の30%以上で赤字にも耐えれるため倒産リスクが低いとされています。総資産12,940,869百万円、利益剰余金 425,596百万円なので以下の式にあてはめます。
利益剰余金の比率(%)= 利益剰余金425,596百万円 ÷ 総資産12,940,869百万円 × 100
3.2%となっているので、なぜ利益剰余金が少ないのかを調べると、コロナ化での赤字が尾を引いていたのとスーパーマーケット事業の競争の激しさで利益率が低くなってしまっているようでした。このように数字の違和感に気付くことで自分の投資対象となり得るのかを判断できるようになります。
自己資本比率が健全か見る
自己資本というのは株主から出資された資金で返済の義務が無いお金となります。総資産のうち自己資本の割合が高いほど企業の資産比率が高いため優良企業とされます。数値でいうと50%以上が良水準で80%以上が最良水準となります。
有利子負債が多すぎないかを見る
企業が銀行からの借入金や社債に対して支払われる利子となります。現金同等物との比較により倒産リスクが分かるようになります。支払いによる利子が年々圧迫している企業は倒産リスクが高まるということです。
損益計算書(PL)で稼いでいるかを見る
損益計算書は(PL)(Profit and Loss statement / プロフィット アンド ロス ステイトメント)の略で企業の売上高、営業利益、経常利益、純利益を見ると、毎期で増収増益しているか分かるようになります。
以下の図はイオン株式会社の決算短信ですが一づつ見ていきましょう。


(出所:イオン株式会社「決算資料」2024年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2,812KB))
https://www.aeon.info/ir/library/report/
文字の強調がされている箇所は四季報にも載っています。ここが毎年上昇しているかチェック。
- 売上高
企業が商品を販売して稼いだ収入。 - 売上原価
商品の値段が決められる前の価格、仕入値となります。 - 売上総利益
売上から原価を引いたものが売上総利益となる。 - 販売費及び一般管理費合計
企業が商品やサービスを売るためにかかる費用と、会社を運営するためにかかる日常的な費用。 - 営業利益
企業が商品やサービスを売って得たお金から、その商品を作るためにかかったお金を引いた後の残りのお金のことです。計算式は以下となります。
営業利益 = 売上高 - 売上原価 - 販売費及び一般管理費 - 営業外収益合計
本業以外で得た配当金、利息、賃貸料、有価証券の売却などの収益となります。 - 営業外費用合計
本業以外でかかった費用の合計で支払利息、有価証券売却損、有価証券評価損などが含まれます。 - 経常利益
企業が普段のビジネスで稼ぐお金のことで、以下の計算式となります。
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 ー 営業外費用 - 特別利益合計
企業が通常の事業活動以外で得た一時的な利益。 - 特別損失合計
通常の事業活動以外で発生した一時的な損失や災害による損害や設備の廃棄損となります。 - 税金等調整前当期純利益
企業が稼いだお金の中で、税金を払う前に残っている利益。 - 法人税、住民税及び事業税
企業が稼いだ額に課される税金。 - 親会社株主に帰属する当期純利益
企業が1年間で稼いだ純利益のうち、親会社の株主が受け取ることができる利益
キャッシュフロー計算書で現預金を見る
キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement / キャッシュ フロー ステイトメント)は企業の現金預金がいくら残っているか分かるようになります。3構成に分かれているので見てみましょう。
- 営業活動によるキャッシュフロー(以下:営業CF)
- 投資活動によるキャッシュフロー(以下:投資CF)
- 財務活動によるキャッシュフロー(以下:財務CF)
今まで見た貸借対照表(BS)では資産と負債の確認で倒産リスクを見る、損益計算書(PL)では売上、利益を見て毎年利益が出ているかを見ていました。こちらのキャッシュフロー計算書を読むと現金の動きを読むことができるようになります。
こちらで注視するのは営業CFとなります。
営業CFは企業が稼いだ額となり年々増加しているとそれだけ企業の稼ぐ力が強いと言えます。
逆に連続赤字続きの場合は政策や世界情勢の懸念などの理由で稼ぐ力が下がっている場合もあります。
成長株を見つけるスクリーニング条件6つ
- スクリーニング機能を利用して成長株を見つけるには「PER」「PBR」「配当利回り」「自己資本比率(ROE)」「自己資本比率」「EPS成長率」の指標を使う
- まずは上昇トレンドにあるものを監視リストに入れて仕手株かどうか見極め、同業他社の情報と共に業績を確認して会社の情報を集めましょう。
- エントリーはまたテクニカル分析の話なので別記事で解説します。
- PER 9~15倍
- PBR 0.8~1(1.5)倍以下
- 配当利回り3~4%以上
- 自己資本利益率(ROE)5~10%以上
- 自己資本比率50%以上
- EPS成長率 7~10%以上
ファンダメンタル分析のおすすめ書籍
私が何回も読み直した書籍で今も愛読しているのですが、投資初心者なら一冊は持っておいた方が良いと思う本を紹介します。
株の銘柄選定をする際に企業の選び方を大事なポイントに分けて説明してくれているので分かりやすいです。以下に分かりやすくまとめますね。
まとめ
- PERがその業種でどれぐらいの水準なのか他社と比較する(時価総額上位5社ほど確認)
- PBRが割安か業界と同水準か見る(時価総額上位5社ほど確認)
- 配当の確認をして配当利回りが 3 ~ 4 %か見る
- ROEでどれくらい利益を出しているか見る目安は8~10%以上
- ROAは5%以上あるか?
- ROEとROAを見比べて財務レバレッジの倍率を見る(目安は2~3倍以下)
- 貸借対照表(BS)で負債が多くないか倒産のリスクの確認(要3年ほど遡る)
- 総資産のうち利益剰余金どれほどの比率か確認
- 自己資本比率は50%以上か?
- 有利子負債3年ほど見て増加してないか?年々増加していると倒産リスク高
- 損益計算書(PL)で企業が利益を出しているかの確認(要3年ほど遡る)
- キャッシュフロー計算書の営業CFを見て本業で稼げているか確認する
- 監視リストに入れる
- エントリーは権利落ち後にするかテクニカル分析で下落時に購入するようにする
これらの指標を使って現在のトレンドに近い割安株を探し出し監視リストに入れることで大きな下落(調整)が入った時に仕込むことができるようになります。日頃からスクリーニングをしてここになら投資しても良いかなという企業を日ごろからチェックしておくようにしましょう。
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